杉本 隆博
事業領域を超えた兼務。常にゴールを見通しながら徹底した顧客目線を追求
杉本が所属するエンタープライズサービス事業本部 システム開発部は、Webシステムのほか、コミュニケーションの質を高める、より視認性のよい各種ビジネスフォームを生成するプログラムなど、民間企業の顧客向けに各種システムの開発から運用までを幅広く請け負っています。
中でも杉本が担当するのは、学習塾向けのコミュニケーション支援サービスである「学習記録コネクト」。その設計・開発・運用・顧客サポートを一貫して手がけています。
杉本 「学習塾様向けにさまざまな情報を一元管理するためのWebシステムで、学習塾の先生と保護者および生徒の皆様とのやりとりを円滑にすることを目的としています。
たとえば、学習塾様のイベントスケジュールや臨時休校日をWeb上で共有したり、外部の模試や検定などを受験したりする際、従来であれば、生徒の皆さんが自宅に持ち帰り保護者の方へ渡していた申し込み用紙を、アプリを通じて保護者様向けに直接送付することが可能です。全国の小中学生向けの学習塾様を中心に、導入いただいています」
エンタープライズサービス事業本部での開発と並行して、杉本は公共事業本部の業務を兼務。戸籍総合システムの検証工程の管理にも携わっています。
杉本 「自分を含むふたりの社員と協力会社のメンバーを加えた10名ほどで、『追加でこの点も確認すべき』『こんなテストも追加したほうがいい』という具合に、本来の開発部隊とは違う第三者の目線から検証の切り口を出すことで、システムの品質保証支援する役割を担っています」
民間と公共、ふたつの事業領域をまたいで活躍する杉本。仕事をする上で大切にしていることがあります。
杉本 「常に、それぞれのプロジェクト本来の目的を意識するようにしています。目の前の作業に追われていると、目的を見失いがちになるもの。そもそもの目的をいつも念頭に置いて、それを達成するためになすべきことにフォーカスするよう心がけています。
また、すべてのプロジェクトは、お客様が抱える本当の課題を掘り下げるところから始まります。よくよく聞いてみると思わぬところに原因があることがわかるなど、お客様自身が課題に気づいていないケースが少なくありません。丁寧に対話し確認しながら本質を見抜くことがわれわれの重要な仕事だと思っています」
公共から民間の領域へ。カスタマーサポート部での経験が糧に
学生時代は経済学を専攻した杉本。公共領域にターゲットを絞って就職活動をする中で出会ったのが、富士フイルムシステムサービスでした。
杉本 「社会貢献度の高い仕事に就きたいと考えていたんです。全国の人が使うようなインフラづくりに携わりたいと思っていたので、当社の戸籍総合システムの商品力やシェアの高さはとても魅力的でした」
入社後に杉本が配属されたのは希望していた公共事業本部の開発部門。ところが、所属部署はそのままに別の部署の業務を担当することになりました。
杉本 「『まずはお客様のことを知りなさい』という部長の意向で、カスタマーサポート業務を担う部署において戸籍総合システムのサービスデリバリーを担当することに。新任研修やOJTを経た後、1年目からお客様先でのサポート業務を担当しました」
そもそも杉本は文系の出身。開発スキルがあったわけではないので、学べる機会を与えられたことに大きな戸惑いはなかったと言います。むしろ、早い段階で顧客の近くで仕事ができたことで、いまも大切にする価値観の原点ともいえる経験をすることになりました。
杉本 「自分がいずれ開発に関わるシステムをお客様がどのように使っているかを知ることができたのはとても有意義でした。お客様がシステムを利用する背景は、それによって何かしらの目的を達成したいと考えているからだと思っています。
機能に関する重要な議論に加わるのは、そのずっと後になってからのことですが、『お客様が本当に必要としていることは何か?』と問い続ける姿勢が身についたことは、大きな収穫でした」
2年目にシステム開発部に戻り、戸籍総合システムや総合証明システムの開発に携わった杉本。約5年に及ぶ公共事業本部での仕事の中で、とくに印象に残っていることがあります。
杉本 「3年目に大規模なシステム更改を経験しました。入社1年目にカスタマーサービス部員として訪問したことのあるお客様の案件で、要件が特殊だったことから、システムのことを良く知る私に声がかかったんです。九州の自治体のお客様だったので、数カ月間、毎週のように遠距離出張していました」
その後、杉本はいまも担当する学習塾向けコミュニケーション支援サービスである「学習記録コネクト」の立ち上げに参加。意外な巡り合わせから、公共と民間の事業領域をまたぐダイナミックなキャリアを歩み出すことになりました。
杉本 「本来、当社においては文教系のプロジェクトは民間担当部門の領域です。しかし、当時は社内で新規事業の開発が盛んに行われはじめた時期であったため、巡り巡って担当の異なるわれわれに支援の依頼が来た、というのがそもそもの発端です。
はじめは試算見積だけの予定でしたが、気がつけばふたりの先輩社員と3人でプロトタイプの設計をするようになっていました。しばらく兼務状態が続き、やがて専任となって現在に至っています」
ゼロからの新規事業立ち上げと、公共と民間ふたつの領域横断の経験が刻んだ成長の道筋
本格的な新規事業の立ち上げにはじめて参加することになった杉本。当時、社内にナレッジがなく、あらゆるものをゼロからつくり上げていく必要がありました。
杉本 「AWSを利用しての開発でしたが、お客様に提供するシステムでの前例は皆無。そのような中、インフラの担当者が『AWSならではの設計を』ということで、未経験の技術をふんだんに取り入れ、当時それ以上のものはないといえるほどのものをつくってくれました。
とはいえ、経験者がいないため構築のプロセスは手探り。システム設計だけでなく、環境構築、ワークフローの組み立てやルールづくりまで、営業以外のことはすべてやりました。
寄せ集めのメンバーでしたが、システムについて営業担当へ十分理解してもらえるまでとことん説明したり、お客様先へ私も同行したりと、チームには一体感がありました。それぞれが自分のやるべきことをやり切ろうという気持ちが推進力になっていたと思います。
当初は立ち上げで精一杯だったものの、お客様が本当に必要としていることを考えながら、お客様と一緒になってシステムを作りあげることができました。その結果、最終的に市場にマッチするプロダクトになったと自負しています」
公共と民間の事業領域の違いに直面する中、戸惑いを感じながらも、杉本は多くの気づきや学びを得ることになります。
杉本 「公共で扱うもののほとんどがパッケージシステム。すでに仕様の大枠が決まっていて、それをどう実装するかを考えるのがわれわれベンダーの仕事ですが、民間の領域でははじめからすべて自分たちが考えなくてはなりません。
さらに、立ち上げ期ということもあり、打ち合わせをしたり要望を聞いたりと、目の前にはいつもお客様がいます。相手に寄り添いながらシステムをつくり上げていく経験はとても新鮮でした」
図らずも事業領域をまたぐことになった杉本。そのことが思わぬ成長につながりました。
杉本 「設計や要件定義だけでなく、自分たちでコードを書いて、テストもリリースも手がけたことで、開発者としての幅が大きく広がったと感じています。お客様第一で物事を考えられるようになったのも、公共領域の事業だけでなく民間企業向けの事業にも携わったからこそです。
それまでもお客様の立場に立つよう心がけてきましたが、さまざまなお客様と関わらせていただく中でお客様視点とはどんなもので、お客様のために何をすべきかなど、当時のビジネスオーナーから教えていただいたことが大きな財産になりました」
責任をともなう自由な環境が挑戦と成長を後押し。より良い組織づくりをめざして
2023年で入社15年目を迎えた杉本が富士フイルムシステムサービスの最大の魅力だと話すのが、自由度の高い環境。民間と公共ふたつの事業領域で活躍してきた立場から、同社で働くおもしろさについてこう話します。
杉本 「チーム全員がお客様のほうを見ていて、お客様にとって価値のあることに誰もが積極的です。熱意をもってやりたいことを『やりたい』といえば、やらせてもらえる風土があると思います。
推進力の有無は問われますし、本来の自分の役割を果たしていることが大前提ですが、実際に自分も若手のころから、『やってみなよ』と周囲から後押ししてもらってきました。いま取り組んでいる学習塾向けのコミュニケーション支援サービスのプロジェクトでも、社内の開発部のインフラメンバーに頼ることなくAWSを使ってシステムを独自につくり上げるなど、自由にさせてもらっています」
チームリーダーとして5名のメンバーを率いるなど、マネジメントにも携わる杉本。これからメンバーとして加わる仲間に求めるのは、「前向きな姿勢」です。
杉本 「システム開発の仕事に正解はありません。民間の領域ではとくに、どう進めていくべきかに迷って先に進めなくなるときがあります。そんなときに大切なのは、『わかりません。できません』と簡単にあきらめるのではなく、一歩でもいいから前に進もうとすること。
失敗を恐れず、『こんなふうにやってみました』と懸命にもがいたり、手を伸ばそうとあがいたりできる人がこの会社には向いていると思います」
そんな杉本のいまの目標は、新しいことに挑戦し続けること、そしてそのためのメンバーを育成することです。
杉本 「自分の幅をさらに広げられるようなことに携わり続けていきたいと考えています。新規事業に関わる機会はそうあるものではないですが、できればもう一度、立ち上げに取り組んでみたい気持ちがあります。中堅となったいまなら、前回とはまた違うプロセスを踏んで、違う結果が出せるのではないかと考えています。
そのためには頼れるメンバーが欠かせません。後進の育成にも力を入れていくつもりです。とくに関心があるのが、チーム内の開発力の底上げ。スキル向上を支援する仕組みづくりなど、組織ぐるみで取り組んでいきたいですね」
公共と民間、ふたつの事業領域を経験したことで「お客様第一」の姿勢を培った杉本。これからもお客様に寄り添いながら、常にゴールを見据えてお客様への価値提供を実現するべく、挑戦し続けます。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです