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技術の力で防災システム改革。グループシナジーを生み出す画像認識技術

富士フイルムシステムサービスが進めている新規事業、防災・減災DXプロジェクト。ICTを活用し、防災・発災後の行政活動を効率化することを目指しています。ここでプロジェクトリーダーを務めているのが馬石 直登。技術屋としてプロジェクトを牽引する馬石が感じている面白さとは?

開発

馬石 直登

PDCAを素早く回し、着実な開発を。リーダーとして掲げるミッション

プロジェクトリーダーという形で、商品開発から販売戦略までの幅広い活動の指揮をとっている馬石。彼は学生時代に情報処理を専攻し、画像処理や動画を用いた個人識別技術の研究をしていました。そして2009年に富士フイルムに入社。ICTや画像技術を扱うセクションで経験を積み、富士フイルムシステムサービスに出向しています。

馬石 「昨今、富士フイルムの画像技術センターでは、技術やノウハウだけに終始した研究をするのではなく、商品としての出口までを描いた研究をすることが重要だという認識を強めています。いわゆるソリューションビジネスを行っていこうということで、そのためのチームも新設されたところです。ちょうどそんな折に、今回のプロジェクトの話が出たのです」

防災・減災DXプロジェクトは、ある自治体からのニーズが発端でスタートしました。災害発生時の罹災証明の発行を、現状は人海戦術で行っていますが、もし首都圏で大きな災害が発生した際のことを考えると、処理に膨大な時間がかかりとても追いつけないというご相談でした。この課題を、DXで効率化することを目指してプロジェクトは走り出します。

馬石 「私はドローンを使い、被災した街の状況を画像で把握するというシステムを開発しています。
富士フイルムの画像技術センターでは、医療分野ではX線・CT・MRIからがんを発見する技術を確立しています。ほかにもインフラの分野で、コンクリートにひびが入っていないかを確認する橋梁点検の技術なども持ち合わせています。このような技術を、自治体様の課題解決にも応用できるのではないかと思ったのです」

プロダクトオーナーとして「こういうものを開発して欲しい」という指示を出す役割を担う馬石。開発において、あるミッションを掲げています。それは“着実な開発をすること”。

馬石「従来の製品開発では、ウォーターフォールという形で、企画・設計・実装・評価という一連の施策を、上流から下流までの1本道で行うやり方が主流でした。しかし、今回のプロジェクトでは、まずは絶対に必要な基本機能に絞って盛り込むようにしています。そこから、お客様や、自治体様とのやりとりを短く何回も繰り返し、製品をより良いものに磨いていく形をとっています」

そこで今回は商品をリリースする前にベータ版を作成し、協定を結んでいる自治体や消防・警察・周辺住民を巻き込んだ防災訓練を行い、製品を出す前に一旦評価をしてもらうことを想定しています。

研究がしっかりビジネスに活用されていく。そんな「事業会社らしさ」が魅力

商品開発以前の「研究」の段階からグループ間で協働するのは、初めての試みであるという馬石。今回のプロジェクトでは、富士フイルムと富士フイルムシステムサービスの両社の担当領域の棲み分けを行なっています。

富士フイルムは、サービスとしての構成やどの技術を活かすかの選定や要素検討に軸足を置き、その一方で、富士フイルムシステムサービスは、顧客である自治体へのヒアリングやプロトタイプでの実装検証を担っているのです。

馬石 「都度、自治体様の課長クラスの方へ、細かいチェックと中間報告をしながら製品としての価値を確認しています。そのような検証を1年間続けた中で、システムの活用に関する課題が浮かび上がりました」

災害処理業務を一連の流れで見ると、自治体の中でもさまざまな部署が各フェーズで関わります。職員様の入れ替わりが起きる中で、うまくシステムが活用できるのか。この検証がまだ足りていないのが現状だといいます。

馬石 「ここについては、防災訓練をしっかり行い、フィードバックを製品に入れ込んでいくことが必要だと思っています」

このほかにも、「せっかく導入するのなら、平時でも活用したい」という自治体からの要望を受け、平時でも活用できるシステムを目指し、ベンチャー企業をはじめとする他社とパートナー連携をすることで、新たな技術を取り込もうと働きかけています。

馬石 「自社技術で全てをまかなうのではなく、積極的にパートナー企業や大学などと手を組んで進める方針です。このような意思決定をスピーディーに行えるのは、富士フイルムシステムサービスの魅力だと思います。大きい研究組織の場合、組織内で完結し、外部と連携することがないことが多いのではないでしょうか」

外部への垣根の低さのほかに、馬石は、富士フイルムシステムサービスの「事業会社らしさ」にも惹きつけられているといいます。

馬石 「研究を研究で終わらせずに活かすためには、事業という形態に移ることが基本的には必要です。事業会社である富士フイルムシステムサービスなら、研究組織がやっていることをしっかりとサービスに活用させていくことができるので、そこも大きな魅力だと感じます」

特定の研究にとどまらず「はみ出した経験」をするチャンスがある

今回のプロジェクトで実績を作ることができれば、先々は、その技術や概念を世の中に広く活用していくことができるのではないかと可能性を感じている馬石。

馬石 「現在開発している技術では、ドローンに搭載されたカメラの映像とセンサー情報、またGISと呼ばれる地理情報や画像処理技術を用いることで、家を特定することができるようになります。ドローンを飛ばし、その行き先が誰の家であるかが分かるのです。

そのような技術が確立できれば、今回の罹災証明に関わる業務以外にも、さまざまな自治体様の業務に応用がきくはずです。このような横展開の可能性があるのも、一つ面白いところだと思います」

今まで自治体において人の力で取り組んでいた業務を、機械に置き換えるという今回の開発。機械が、人の介在を必要としないレベルでの精緻な処理を行えるようになれば、工数を大幅にカットすることができます。

馬石 「私たちは、自治体職員の方々と直接顔と顔を合わせてシステムの開発を進めています。それら活動を通して、日々の苦労を知ることができたので、皆様にとっての価値を追求したいですし、どうすれば本当に嬉しく思ってもらえるのかという部分を考えて活動しています」

馬石以外の開発のメンバーも、立場によって違いはあれど、自分たちの生み出したものがどう社会に貢献するのかを重視している人が多いといいます。

馬石 「言葉を選ばずに表現すると、技術領域のメンバーは、サービスが売れるか売れないかというよりも、それが世の中にどう生かされるかを重視している人が多いかもしれません」

研究家の目線でこう語る馬石。しかし実は彼は、過去に商品開発も経験していました。さらに、自身が開発した商品を自分で顧客に売ろうと考え、営業に移った経験もあります。研究部隊を率いるに至るまでに、幅広い領域で経験を積んできた馬石は、今の環境の魅力についてこう語ります。

馬石 「基本的に大きな組織では、研究をやっている人は研究、営業をやっている人は営業、開発をやっている人は開発と、担当領域にずっととどまってしまう傾向にあると思います。しかし私は、営業に移るなど自由な動きをすることができました。大きい組織ですが、このように研究にとどまらず、顧客ニーズを聞いたり、でき上がったものを顧客に説明・提案したりという経験ができる。

技術のスキルを持つ人間が、そこからはみ出した色々なことに踏み出していけるチャンスがあるのは素晴らしいことです」

大事なのは、過去の経験より思考プロセス。意欲的に課題を発掘する力が重要

プロジェクトを進める上で重要になるスキルについて、馬石は「自ら課題を発掘する能力」が大切であると話します。

馬石 「もちろん技術という意味では、AIエンジニアや、商用開発ができる人材が活躍するフィールドではあります。ただそこに限らず、顧客に話を聞きに行き、自ら課題を見つけてくる能力も重要です」

顧客の中には、当然ITに詳しくない人もいます。そのような人が口にする曖昧で定性的な表現から課題を見つけ、ソフトウェアに落とし込むというスキルが必要だといいます。

馬石 「見つけた課題から自身で開発を進め、それをお客様へ持って行ってフィードバックをいただき、さらに仮説検証をする。このようなサイクルを回すことを得意としている人には、とてもマッチする環境だと思います」

実際にメンバーの中には、自治体に行ってヒアリングをし、プロトタイプを作り、その価値についての評価シナリオまで作り、さらにそれを検証してもう一度手元に戻す……という動き方をしている技術者もいるといいます。

馬石 「逆に言ってしまえば、そのように課題の探索をしていかなければ、いくら待っていても取り組むべき仕事は降ってこないという環境です。自分がやりたいことをどんどんやらせて欲しいという人にとっては、魅力に感じてもらえるのではと思っています」

馬石たちが取り組むのは、既製品のバージョンアップや機能追加ではなく、未知数な新規ソリューションを担う部署。だからこそ、世の中の課題やニーズから、自身でシステム開発に結びつけるということが可能なのだと強調します。

馬石 「専門分野を持っている方も、持っていない方も、これまでやってきた経験とは違うカテゴリーに、意欲があれば取り組める環境なのです」

その意味で、過去の経験よりは、思考プロセスが大事になってくると話す馬石。

馬石 「技術であれ、要件であれ、顧客とのトークであれ、意欲的に新しいことをどんどん身につけたいというような人たちはぜひ来てください。そういうことができる組織です」

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