
平野 江里子
経験を「味わい」ながら組織を育てる──DE&Iで会社の未来を切り拓く

2022年に新設されたダイバーシティマネジメントグループでグループ長を務める平野。同グループにはDE&I(※)推進チームと障がいのあるメンバーが活躍するチャレンジドセンターという2つの組織が設置されています。
「チャレンジドセンターは2013年に設立され人事総務部の直下で運営されていました。2022年に今後の成長のためにダイバーシティ経営を取り入れていこうという判断があり、ダイバーシティマネジメントグループを新設。チャレンジドセンターを含めた組織がつくられました」
富士フイルムホールディングスの中でも迅速にこれらの取り組みを行ってきた当社。現在は富士フイルムホールディングスのCEOである後藤が発した「多様性を競争力に」という言葉をスローガンにさまざまな取り組みを行っています。
「DE&Iは、ともすれば福祉的な活動とも受け取られがちです。しかし、当社では多様性をしっかり会社の成長につなげていきたい。そこを意識して現在は、DE&Iの風土醸成に取り組みながら、女性活躍や育児・介護との両立支援、障がい者雇用の促進など、個別のテーマに取り組んでいます。
たとえば当社は20代の社員比率が高いため、男女問わず若手のキャリア自律を促進していますが、とくに女性のキャリア醸成支援はDE&Iが中心になって取り組み、着実な定着・育成を通じた競争力への貢献をめざしています。
一方チャレンジドセンターは、設立時の入社メンバーは在籍10年を超え、大きく成長しました。年々人数も増え、組織も個人も新たなチャレンジのフェーズを迎えています。対応できる業務の幅は拡がっていますので、品質を向上させ、対価をいただけるサービスを提供する組織へ進化させたいと考えています」
平野はグループ長としてマネジメントに注力し、センター長や支援スタッフと共に40名ほどのメンバーの成長を支えています。
「グループ長として重点目標を設定し、達成のための支援を行います。DE&I推進チームのメンバーとは直接コミュニケーションをとりますが、チャレンジドセンターでは、直接的なマネジメントはセンター長や支援スタッフが行うため、センター長との連携を心がけています。また、部門をまたぐような調整や経営への上申対応なども担当しています」
チームの雰囲気について尋ねると、平野は柔らかな表情を見せます。
「社会的意義の高いテーマなので、誰かの役に立ちたいと思っているメンバーが多いと思います。若者からシニアまで年齢層も幅広く、穏やかな雰囲気です。マネジメントをしていると楽しいことだけではなく大変なことも多々あります。その点も含めて私は経験を味わいながら運営しています」
※ DE&Iとは、Diversity,Equity&Inclusion(日本語:ダイバーシティ・エクイティ&インクリュージョン)の略称。すべての人に平等なツールやリソースを提供するのではなく、一人ひとりの状況に合わせて適切なツールやリソースを提供し、公平性を担保することで多様性と包括性のある組織にしていくという考え方
広報から品質保証、そしてDE&Iへ。未経験分野にも果敢に取り組む強さの秘密

創業者のカリスマ性や企業理念に惹かれ、新卒で化粧品メーカーに入社した平野。物流部や営業など幅広い経験をしていく中で今後のキャリアを考えるようになります。
「行きたい部署には自分のポジションがないと思い込んで転職を考えた部分もあるため、今、自分が雇用定着支援をする側になってみると、当時の判断は少し浅はかだったと感じます。
ただそんな折に母が体調を崩してしまって。少しでも通勤時間を短縮して母のそばにいられる時間を増やしたいという思いもあり、転職を決意しました」
2005年、富士ゼロックスシステムサービス(現・富士フイルムシステムサービス)に入社した平野。当時の印象について、は次のように振り返ります。
「社名の印象から、複合機に関わる会社だと思っていたんです。でも調べてみると全然違う事業をやっていて、『なんでこんなにおもしろい会社なのに知られていないんだろう』と純粋に思いました」
入社後は広報担当として企画グループに配属。未経験からのスタートでしたが、前向きに取り組みました。
「転職の際お世話になったエージェントの方が、学生の頃からの思考性などを鑑みて、『あなたは広報をやった方がいい』と言ってくれたんです。そこで当社に入社し、およそ10年広報に従事。人と人、情報と情報をつなぐ仕事に大きなやりがいを感じました」
その後、お客さまをより深く理解したいという願いが叶い、2015年にCS品質管理グループへ異動。CS調査や品質保証の活動に従事し、マネージャーにも昇格します。
「広報は良い話にフォーカスすることが多い仕事ですが、CS品質管理グループで事業への関わりが増える中で、お客様接点の苦労も垣間見ました。CS調査や品質問題の対応を通じて事業支援の一端に関われることが喜びでした」
そんな中2022年に経営統括本部 人事総務部のダイバーシティマネジメントグループの立ち上げに関わることになります。産休・育休から復帰して半年後の異動でした。
「晴天の霹靂でしたね。品質保証をもっと極めようと思っていた矢先でした。でも、不安はあまり感じない方なんです。また、新しい組織で挑戦ができることにワクワクしていました」
「断る選択肢はない」。後輩のひと言が背中を押した管理職への道のりと家族への想い

平野は、これまでに2回の産休・育休を取得しています。ただ、ある程度キャリアが確立していた中での休業だったため、復帰後の不安は少なかったと言います。
「『戻って何ができるだろう』とは思いませんでした。むしろ、若いうちに産休・育休に入る社員の方が不安を感じやすいのではないでしょうか。年齢や経験によって、心理的なコンディションは異なってくると感じています」
とはいえ、偶然にも2回の産休・育休はどちらもプレマネージャー・マネージャーの昇格時期と被っており、とくにプレマネージャーに昇格を打診された際は正直迷いもあったと語ります。
「当時、女性管理職は会社内でも少数で、子育てしながらの管理職は想像がつきませんでした。それでもプレマネージャーであればなんとか挑戦できるのではと思いチャレンジをして、その時の心境を後から後輩に話すと、『平野さんが妊娠を理由に断ったら、これから先の後輩たちもみんな断らなければいけなくなるじゃないですか』と指摘されて。その言葉にハッとして、自分の選択の責任の重さを感じました」
その時の後輩の言葉にも背中を押されながら、その後2度目の妊娠と重なるタイミングでマネージャー昇格試験にもチャレンジ。組織に申し訳ない気持ちがありましたが、当時の上司が第一声で『おめでとう』と言ってくれたことが嬉しく印象に残っています。 現在はグループ長となった平野。今大切にしていることは「向き合うこと」だと言います。
「うまくいかないこともたくさんありますし、上司からの期待にプレッシャーを感じることもあります。またDE&Iという正解がひとつではない分野に向き合う難しさもあります。だからこそ『逃げずに向き合う』ことを大切に、仕事に取り組んでいます」
業務と家庭の両立には、家族と職場の協力が不可欠です。
「時間の制約による日々の綱渡り状態は大変です。家族の理由でメンバーに負担をかけることもあれば、家族に無理をさせていることもあります。どうしても家族への気配りは後回しになりがちですが、育児においては言葉で想いを伝えることを大切にしています。
現在は、上司や同僚、チームメンバー、そして家族から多くの理解やサポートを得ながら仕事を続けることができており、恵まれた環境に感謝しています。このような支えに応えるべく、会社が与えてくれたチャレンジの機会に誠実に向き合い、これからも前進していきたいと思っています」
忙しい毎日を明るく直向きに歩み続ける平野。その原動力には母の存在があると言います。
「実は20代の時に母を亡くしているんです。母はパートで中学校の事務員として働いており、家庭の事情で進学できない子どもたちの就学援助をしていました。葬儀の時に1人の高校生が足を運んでくれて『平野先生のおかげで高校に行けました。ありがとうございます』とお手紙をくれたんです。私もこんな人生を歩みたいと思いました。
また、短かった母の人生を肯定するために私自身がいつでも明るく元気に頑張っていたい思いがあります」
「縁の下の力持ち」として組織に貢献。自分らしいリーダーシップスタイルの追求

富士フイルムシステムサービスの魅力について、平野は人と規模感を挙げます。
「サービス事業会社なので、お客さまに寄り添い、価値を提供することへの意識が非常に高いことが特長です。社員一人ひとりのお客さまに向かうエネルギーが強く、それぞれの個性を活かしてお客さまのために働いている社員がとても多いと感じます。
また、社員数で約1,000人という規模感も自分の仕事の手応えを直接感じやすく、気に入っています」
制度面も充実しており、働きながら育児がしやすい環境が整っています。
「育児・妊娠・傷病・介護といった事情がある場合、上司の承認を得ることで回数制限なくリモートワークを利用でき、コアタイムなしのフレックスタイムも適用可能です。そのため、有給休暇を使わずに子どもの行事や家族の用事に対応できます。子どもが病気になった場合など、柔軟に在宅勤務することもでき、これは大きな安心感につながっています」
自身が率いるダイバーシティマネジメントグループの今後については、組織を形にしていく重要な時期だと語ります。
「設立から4年目を迎え『やっとここまで来られた』という安堵と、『やり切らなければ』という責任感があります。スローガンの通り、多様性を当社の事業成長につなげていきたいです。
その後はいろんなことに挑戦してみたいです。可能ならグループ公募制度を活用してグループ会社で働いてみたり、スラッシュキャリア制度を使って他部門との兼務をしてみたいです」
家族の支えもありながら、仕事と家庭の両立に奮闘する平野。多忙な日々を送る中、自己研鑽も欠かさず行っています。
「現在の仕事に直接活かせると考え、キャリアコンサルタントの資格取得をめざしています。誰かにキャリアの相談を受けた時に、根拠を持ってアドバイスをしたいと思ったんです。
キャリア理論だけではなく、労働法の知識やカウンセリング理論なども学べるのでマネジメントにも生かせるのではないかと考えています」
当社を「Will(やりたいこと)」のある人が輝ける企業と評する平野が、女性管理職をめざす方へメッセージを送ります。
「リーダーシップにはさまざまな形があります。従来の価値観にとらわれず、自分らしい在り方を見つけることが大切です。私自身は組織マネジメントに徹し、メンバーの努力を結実させることに注力したいと思いながら取り組んでいます。
縁の下の力持ちとして組織の成果に貢献することも重要な役割です。ぜひ自分なりのマネジメント像を見つけてほしいですね」
※ 記載内容は2025年6月時点のものです