私たちの事業 Business
最新技術と精鋭人材。総力戦で「防災・減災DXプロジェクト」に向き合う挑戦の日々
プロジェクトマネージャー
長谷川 道裕
新規事業創出のプロジェクトマネージャーとしてチームの指揮を執る
2021年8月現在、長谷川が所属するのは、経営統括本部内に新たに発足したデジタル戦略推進部。
新規事業を生み出すために発足した部署で、DXという手段を通じて、官民問わずこれまでになかったプロジェクトを立ち上げて行くというミッションを担っています。
その主力プロジェクトとして進められているのが、現在長谷川がプロジェクトマネージャーとして指揮を執る防災・減災DXプロジェクト。その領域は災害の前・中・後と多岐に渡りますが、注力しているのは家屋などの被災の程度を証明する罹災証明発行の迅速化です。
罹災証明とは、災害発生時に住民が災害を受けたことを証明するために行政が発行する証明書。デジタルテクノロジーを駆使して発行にかかるプロセスを効率化するための新たなサービスを作っています。
長谷川 「通常、プロジェクトマネージャーは、製品開発やシステム開発という業務を中心的に行うことが多いと思うのですが、この部署の目的は新規事業を創出すること。事業が成長するまで実に多くの業務を行うため、通常のプロジェクトマネージャーよりも守備範囲が広いのが特徴だと思います。システム開発などは当然のことですが、サービス・マーケティングの領域から顧客獲得までの一連の業務を担っています」
業務領域が広いため、長谷川以外のプロジェクトのメンバーの役割も多岐に渡ります。
現在、営業・マーケティングやロビイングを担うメンバー、技術検証やシステム開発を行うメンバーなどが集まり、関わっているのは全体で20名~25名ほど。長谷川は防災・減災DXプロジェクトの企画立案者の一人であることからプロジェクトマネージャーを務めることになりました。
現在の取り組みのきっかけは、自治体から直接、災害対応に関する喫緊の課題について相談を受けたことでした。
防災・減災という大きな社会課題を前に、人材と技術が集結した
相談を寄せたのは、とある都内の自治体でした。
長谷川 「首都直下型地震が起こってしまった場合、従来のやり方では罹災証明書交付の完了に年単位の時間がかかる可能性があるという相談を受けたのです。そこまで時間を要すると、当然被災された住民の方の生活再建が成り立ちません。この大きな社会課題について、最新のテクノロジーを駆使して圧倒的なスピードと省力化を両立させ解決することはできないものかと考えました」
この課題を解決していくためには自社が保有している技術だけに留まらない発想が必要だと感じた長谷川は、富士フイルムグループや社外の優れた技術を持っている会社に協力を仰ぐことを考えました。
どういう風に組み合わせれば課題解決に至るストーリーを作れるか、最初の仮説作りをしたのです。そしてその仮説に基づき、社外、もしくは富士フイルムグループの中で、欲しい技術を持っていそうなところに相談に行きました。
長谷川 「幸い、富士フイルムに、画像処理やAIを研究しているセクションがありました。そこに相談したところ、非常に興味深いテーマということで協力いただけることになりました。具体的にどういうことができるのかを話し合い、まずは検証から始めようというところでスタートしました」
これまでも、親会社である富士フイルムビジネスイノベーションと事業に取り組むことはあったものの、富士フイルムと共同で進めていくのは異例のケース。
このような連携はあまり例のない形でした。そのきっかけには、上長である竹中が「一度相談に行ってみよう」と橋渡しをしてくれたことがありました。
長谷川 「いざ打診してみると、研究部門の方が『非常に興味深く意義あるテーマ。自分たちの技術をどれくらい生かせるのか、一度チャレンジしてみたい』と賛同してくれたのです」
このように、幅広くグループ内から人材を募ることで、体系的ではなく有機的に必要な人材が集まっているのがこのプロジェクトの特徴の一つ。
プロジェクトに「災害対応」という社会的意義のある目的があったからこそ、賛同するメンバーの協力を仰ぐことができ、プロジェクトをスタートすることができたのです。
いきなり壁に直面。最初の実証実験を終えられるのか
プロジェクトが発足した当初、まず長谷川たちが直面した課題が分析対象のデータの収集でした。
長谷川 「まず、映像から“家屋がどのくらい壊れているか”を判定することができるAIのアルゴリズムを開発することになりました。そのためには被災した家屋の写真データを収集し学習させる必要があったのですが、実は相談を受けた自治体様は被災経験がありませんでした。どのように教師データを収集すれば良いかという壁にいきなりぶつかりました」
自治体や専門家からの意見を引き出すだけでは足りず、研究機関にも依頼をしていったという長谷川。その他、パブリックドメインに公開されている情報を集めるなどの収集方法も取り入れ、プロジェクトメンバーが各所を出向いて交渉するなど地道な活動を続けていきました。
初期のアルゴリズムを作っていく段階では、とにかく汗をかいて情報を集めて、チーム総力戦で泥臭く取り組んでいったのです。
データ収集以外にも乗り越えるべき壁に次々に直面しながら、どうやったら解決できるのか社内外問わずオープンに議論していったことで、なんとか山を乗り越えたメンバーは、2020年の10月頃に「このプロジェクトが、未来を変えていく」という確信を持ち始めます。
長谷川 「本当に実現できるかどうか目処がたたないうちから手探りでプロジェクトを進めてきたのですが、始動して3ヶ月ほどが過ぎた頃、この方法であれば社会課題解決に大きく役立つだろうと、ある程度の形が見えてきたのです」
こうした技術検証を一つ一つ重ねた次の段階は、実証実験です。本当に役立つ製品を作るためには、自治体に実機を触っていただき、どんな改善点があるのかフィードバックを集める必要がありました。
ところが、自治体にとっても実証実験への協力は経験の乏しい試み。社会課題を解決したいという気持ちは同じでしたが、アサインされた職員の方々は普段の業務も忙しく、本プロジェクトに力を注いだり時間を割いていただくのが難しい状況もしばしばありました。
長谷川たちは、どうにか時間を捻出してもらえるようにスケジュールを調整し、協力を得られるよう努めました。
長谷川 「職員の方々も本当にお忙しかったと思いますが、開発が進んでいく中で、率先してアプリケーションを使ってくださったり、実験に必要な建物の準備をしてくださったり、だんだんと前のめりで協力をしてくださるようになったことが嬉しかったです。意義のあるものを一緒に作りあげていく感覚を得られ、非常にやりがいを感じた瞬間でした」
次に長谷川が向かったのは、九州でした。九州エリアは熊本地震や豪雨被害が多い地区で、過去に災害対応を経験している自治体が多いのです。
長谷川 「過去に災害を経験されている自治体様を一つ一つまわって協力を打診しました。真に役立つサービスを世に出すため、例えば、開発中のアプリやサービスを見ていただき、これまでの災害対応経験と照らし合わせ、不足する機能はないかなどの助言をいただけるよう、依頼をしていったのです」
幸いにも、いくつかの自治体が要請に応じてくれることとなりました。万が一災害が発生したとしても、このプロジェクトから生まれた製品が、いち早い住民の生活再建に貢献できるよう、開発スピードを重視しながら複数の実証を並行して行う予定です。
絶対に世の中の役に立つ。仲間とともに一歩ずつ歩み続ける
既存の主力事業領域とは異なり、新規事業の創出ならではのアプローチが求められることが多い防災・減災DXプロジェクト。
一方で、非常に強い社会的意義のある取り組みに、長谷川もプロジェクトのメンバーも強くモチベートされているといいます。
長谷川 「自分ひとりでは大きなテーマに挑むことができません。賛同してくれた仲間がそれぞれの役割を理解し、心血を注いでくれている結果、一歩一歩プロジェクトが前進していることを実感しています。それが、このプロジェクトをなんとしても成功させるという私のモチベーションにもつながっています。単なる実験で終わらせず、絶対に新規事業として進発させていくんだと決意しています。」
このプロジェクトを通じ、富士フイルムグループ全体を見渡すことで、改めてさまざまなスキルや技術を持つ人材が集まっているという気づきがあった長谷川。
それらの組み合わせによってまた新たな価値が生まれることに、可能性を感じています。
長谷川 「チームには異彩を放つメンバーが集まっています。お互いの価値や特徴を認め合って協力しながらプロジェクトとして活動できているのが、非常に良い点です。
新規の事業を起こして進めていくこのプロジェクトには、自分でビジネスを生み出したいという発想の人にとって、非常に面白い環境が整っていると思います。一つのビジネスを生み出すためには、実にさまざまな役割が必要です。営業、サービス・システム開発、企画など、あらゆるロールの集まりで一つの成功を目指します。自分の得意領域を確立している人にとっても、新たな学びや発見、気付きは多いはずです。
多彩なメンバーの中で挑戦したい方、自分自身をもっと成長させたいと思っている方は、私たちと大きな目標に向かってチャレンジしてほしいと思います」
既存事業を維持・発展させるプロジェクトにはない想定外のことが起こり得るのが、新規事業プロジェクトの特徴であり醍醐味でもあります。
長谷川が率いる防災・減災DXプロジェクトは、社会を変える大きなイノベーションへのチャレンジを今日も加速させています。